目的が違えば選択すべき菌も変わってくるし、環境が違えば生き残る菌も変わってくる。
麹菌、乳酸菌、酵母の3つについて、性質や役割を生酛系酒母と天然醸造醤油で比較していく。
流れを確認しながら比較するためにまとめたけどこの程度の概要ではちゃんと理解するには至らないので、この記事を読んで全体像を把握したらリンクした引用元や参考文献を全部読むべきかなと思う。
日本酒と醤油の相互理解、全体像と流れを把握し、更に詳細を掘っていくための索引としては価値があるかなと。
麹菌
まずは仕込みや麹造り以前に種麹の話。
生酛は「乳酸を添加しないもの」ではなく「自然の乳酸菌を取り込んでpHを下げるもの」と捉えて分類する。
そして「麹由来のクエン酸でpHを下げるもの」を焼酎系として分類する。
焼酎系は余談程度で。
詳しいことは、麹学(村上英也 編著) P195「育種の対象とすべき麹菌の性質」あたりに書いてある。
生酛
清酒用麹菌として具備すべき性質。
1)蒸米によく繁殖すること,繁殖速度の速いこと
2)アミラーゼ力の強いこと
3)清酒の雑味二を少なくするためにプロテアーゼカの比較的弱いこと
4)香りのよい米麹を造ること
5)胞子着生がよく種麹が造り易いこと
6)長い胞子柄は機械製麹において堆積層の空気流を妨害するので,胞子柄の短いこと
7)火落菌の生育必須因子であるMVAを生産しないこと
8)黒粕防止の意味から米麹を褐変しないこと(チロシナーゼを生産しないこと)
9)DFを生産しないこと
清酒醸造微生物学の進歩(1)
使われる麹菌の種類は以下の通り。
・Aspergillus oryzae (ニホンコウジカビ)
黄麹菌。
日本酒用、甘酒用といえばこれ。
でんぷんを分解する酵素であるα-アミラーゼ遺伝子、α-グルコシダーゼ遺伝子は複数個存在することが分かり、このことがA. oryzaeの清酒醸造で必要な高アミラーゼ生産の理由のひとつと考えられます。
麹菌ゲノム解読 | キッコーマン
ニホンコウジカビ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%AB%E3%83%93
焼酎系
使われる麹菌の種類は以下の通り。
・Aspergillus luchuensis (アワモリコウジカビ)
黒麹菌。
古い分類ではAspergillus awamoriとされていたので古い文献を見る時は注意。
・Aspergillus luchuensis mut. kawachii
白麹菌。
Aspergillus luchuensisの突然変異種。
ニホンコウジカビ(A. oryzae)と異なりクエン酸の生産力が強く雑菌の繁殖が抑えられもろみが腐敗しにくい。
アワモリコウジカビ - Wikipedia
焼酎系麹菌を醤油醸造に用いるとポン酢醤油のような風味の醤油になるらしい。
醤油醸造に用いられている麹菌は、Aspergillus oryzaeとA. sojaeである。
麹菌以外の黒麹菌や他のAspergillus属での醤油醸造の検討が行われたが、黒麹菌はクエン酸を多量に生成するため、ポン酢醤油のような風味の醤油となり、結局は上述の2種類の麹菌が、醤油醸造に最も適した黴であると考えられる。
身近で活躍する有用微生物 食品と有用微生物-和食文化と微生物4 醤油と味噲の微生物
アワモリコウジカビ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AF%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%AB%E3%83%93
醤油
醤油用麹菌に求められる性質。
1)たんぱく質を分解するアルカリプロテアーゼ・中性プロテアーゼの生産能が高く、
2)アミノ酸化を高めるアミノペプチダーゼ・グルタミナーゼが強く、
3)食物組織崩壊に寄与するペクチンリアーゼなどの酵素を生産能が高く、
4)適量のアミラーゼと酸性プロテアーゼを生産し、
5)生育速度が大きく、
6)製麹中の糖消費が多くなく、製麹作業性に優れ、
7)種麹の分生子着生が良好で、
8)マイコトキシン非生産性であること
麹学(村上英也 編著) P196「育種の対象とすべき麹菌の性質」(iii)醤油麹菌
使われる麹菌の種類は以下の通り。
・Aspergillus sojae
黄麹菌。
A. sojaeとA. oryzaeのゲノムを比較したところ、A. sojaeはA. oryzaeと同様に多数のタンパク質分解酵素をもつこと、また、A. sojaeに固有のタンパク質分解酵素遺伝子も複数個存在することが明らかになりました。
しょうゆ醸造では、主原料である大豆たんぱく質を分解するために、麹菌には高いプロテアーゼ活性が求められます。
A. sojaeがA. oryzae以上にプロテアーゼ遺伝子を多数もつことは、A. sojaeがしょうゆ醸造で利用されている理由の1つであると考えられます。
また、A. oryzaeはゲノム中に3つのα-アミラーゼ遺伝子をもちますが、A. sojaeは1つだけでした。
麹菌ゲノム解読 | キッコーマン
・Aspergillus oryzae (ニホンコウジカビ)
黄麹菌。
中でも高いたんぱく質分解能をもつ株が使用される。
味噌・しょうゆ製造ではA. sojaeあるいはA. oryzaeの中でも高いたんぱく質分解能をもつ株が使用されています。
麹菌ゲノム解読 | キッコーマン
・Aspergillus tamarii (タマリコウジカビ)
黄麹菌。
たまり醤油用の麹菌。
情報がさっぱり出てこないので詳細不明。
A.tamariiの使用頻度は著しく少ない。
醤油醸造微生物学の進歩(1)
麹菌ゲノム解読 | キッコーマン
https://www.kikkoman.com/jp/quality/research/about/soysauce/genome.html
製麹
以前書いた別の記事を参照。
これも日本酒と醤油を比較しつつまとめてある。
醤油用の麹造り - よしだ’s diary
https://yoshida-eth0.hatenablog.com/entry/2021/08/03/040606
微生物の遷移
ここからは酒母中、諸味中での微生物の働きについて。
まずは全体像の流れを。
生酛
生酛特有の微生物遷移。
打瀬の初期に栄養分が少なくても低温で生育できる硝酸還元菌(Pseudomonas, Enterobacter,その他水棲細菌,産膜酵母)が生えて,汲水中の硝酸を還元して亜硝酸を生成する(最高で10ppm)。
次いで溶解が進み糖分が多くなると,低温で生育できる乳酸菌が生えて乳酸が生成し,亜硝酸と乳酸,濃糖,低温の相乗作用で野生酵母,細菌が死滅するか極端に弱まる。
これは予定しない早い時期に野生酵母などによる増殖がはじまる(早湧き)を阻止するための重要な作用である。
その後品温の上昇とともに乳酸発酵が進み,物量は酸性(pH3.5 ~ 4)となり,硝酸還元菌も含めて雑菌は殆どいない状態になる。
この頃になると亜硝酸は消え,糖分,アミノ酸が増え,酵母の栄養分も十分となり,酒蔵に棲み付いた優良な家付き清酒酵母が生育してくる。
あるいは隣の発酵中の酒母を入れたりする(差酛)。
乳酸菌は生成アルコールのために死滅する。
「生酛造り」に関する一考察
生酛系酒母・生酛 | 灘の酒用語集
http://www.nada-ken.com/main/jp/index_ki/224.html
乳酸菌
生酛
生酛酒母中で生育する乳酸菌は2種類。
硝酸還元菌が生成した亜硝酸が野生酵母の発育を抑制し、低温で仕込むことによって低温耐性のあるこれらの乳酸菌のみが生育する。
・Leuconostoc mesenteroides var. sake
ヘテロ乳酸発酵、通性嫌気性、グラム陽性菌、非運動性、非胞子性、球形。
・Lactobacillus sake
条件的ヘテロ発酵型、グラム陽性、桿菌。
生酛系酒母中の乳酸菌は球菌としてLeuconostoc mesenteroides var. sake,桿菌としてLactobacillus sakeの2種類に限られることが明らかになった。
まず生育の早い球菌が増殖し,2~3日遅れて桿菌が増殖する。
乳酸菌がこの2種類に限られるのは低温が制限因子となっているためで,4℃においてLeuc. mesenteroidesは生育に7~9日,L. sakeは9~14日を要するが,他の乳酸菌は4℃では生育不可能である。
清酒醸造微生物学の進歩 (4)
生酛中の乳酸菌は球菌のLeuconostoc mesenteroidesと桿菌のLactobacillus sakeiにほぼ限定される。
一般に生酛においては最初に球菌が生育し,ついで桿菌が生育する,優占乳酸菌の遷移が起こっているといわれている。
球菌が先に優占乳酸菌となるのは,麹から分離される乳酸菌のほとんどがL. mesenteroidesであること,球菌は栄養要求性が単純であり,生酛初期の栄養分の少ない環境で良好に生育できることが原因であると考えられている。
そして次にL. sakeiが優勢となるのは,乳酸酸性下において亜硝酸耐性の弱いL. mesenteroidesが死滅した後に,亜硝酸耐性の強いL. sakeiが生育してくるためであると言われている。
生酛においてLactobacillus sakeiを優占菌とする増殖因子
一般的に言われているのは上記の2種類だが、以下の論文を見るにLactobacillus curvatusという乳酸菌も酒母中で生存できるらしい。
分離乳酸桿菌B1株およびB2株は,16S rDNA配列解析から,解析した約500bpの配列で,L. sakeiおよびLactobacillus curvatusと100%の相同性を示し,いずれかの菌種であると推定された.
これらのことから,分離乳酸桿菌2株は,L. sakeiではなく,L. curvatusと同定した.
分離乳酸桿菌は,既述のようにL. curvatusであったが,L. sakeiと同程度の低温生育性,アルコール感受性および低pH生育性を有していた.
以上の結果から,分離乳酸球菌L. mesenteroidesと分離乳酸桿菌L. curvatusは,生酛系酒母中で増殖することを示唆しており,生酛系酒母製造安定化のための添加乳酸菌としての活用が期待できる.
県内酒造場の山廃酛から分離した乳酸菌とその性質
硝酸還元菌 | 灘の酒用語集
http://www.nada-ken.com/main/jp/index_shi/214.html
乳酸菌 | 灘の酒用語集
http://www.nada-ken.com/main/jp/index_ni/216.html
Leuconostoc mesenteroides - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Leuconostoc_mesenteroides
Latilactobacillus sakei - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Latilactobacillus_sakei
乳酸菌の種類|株式会社農(みのり)
http://www.minori-lab.com/lacto2.html
醤油
醤油諸味中で生育する乳酸菌は1種類。
高い塩分濃度によって雑菌の発育を抑制し、耐塩性のある乳酸菌のみが生育する。
・Tetragenococcus halophilus
ホモ乳酸発酵、グラム陽性、好気性、中程度の好塩菌、非運動性、球菌。
生育にもっとも適した食塩濃度は5~10%、24%の食塩濃度でも生育が可能。
育成温度は10〜45℃。
生育pHは5.0〜9.0。
醤油乳酸菌Tetragenococcus halophilus(以下,醤油乳酸菌)は,1907年に醤油諸味から分離され,その後,諸味の発酵と熟成に関わる主要な微生物として性質などが明らかにされた.
また,一般的な乳酸菌の性質と大きく異なる点は耐塩性であり,生育にもっとも適した食塩濃度は5~10%であるが,24%の食塩濃度でも生育が可能である.
醤油醸造での醤油乳酸菌の働きとその影響
乳酸菌の役割。
この菌の役割は味噌,醤油諸味の中で乳酸を生成し,諸味のpHを下げ,食塩含有の中で増殖する耐塩性酵母の増殖最適pHにする.
また低いpHは味噌や醤油の変質や微生物の汚染を防ぎ,保存性を増す効果がある.
例えば,仕込後の諸味発酵期間中に味噌や醤油の有害菌である産膜性酵母(Hansenula,Pichia,Debaryomyces属菌)や細菌の菌数がpHの低下と熟成とともに減少し,最後にはほとんど検出されない.
味噌,醤油の微生物
テトラジェノコッカス属 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8E%E3%82%B3%E3%83%83%E3%82%AB%E3%82%B9%E5%B1%9E
漬物と微生物
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM1511_04.pdf
A. oryzae麹を使って醤油を仕込む場合
A. oryzae麹はA. sojae麹よりもクエン酸含量が多いので諸味初期のpHが低くなる。
初期のpHが低いため諸味中での醤油乳酸菌の生育が不振で乳酸や酢酸の生成が少なく、熟成によるpHの低下が緩やか。
A.sojae No.9麹の諸味ではpH低下が速やかで,熟成60日において平均4.81とすでに通常の醤油のpHに近似していた。
これは熟成初期に乳酸菌の増殖が速やかで,乳酸,酢酸が多く蓄積されたためと考えられた。
これに対し,A.oryzae S-03麹の諸味ではpH低下が緩やかで,熟成60日で平均4.96と高く,生醤油で平均4.85に達した。
これは熟成のほぼ全期間を通じて徐々に乳酸発酵が行われたことが主因と思われた。
Aspergillus sojaeとAspergillus oryzaeを使用した醤油麹及び醤油の比較
酵母
生酛
・Saccharomyces cerevisiae
清酒の他にもビールやワイン、パンなどを造るときに用いられる醸造酵母。
酵母の一種で、「出芽酵母」や「パン酵母」というと一般的にこの種を示します。
S. cerevisiaeは糖を代謝しアルコール発酵を行うことが大きな特徴です。
サッカロマイセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) の特徴 – 株式会社テクノスルガ・ラボ
清酒酵母を分類上Saccharomyces sakeに分けるべく研究している人も。
日本の文化である日本酒の醸造において、清酒酵母S. sakeとビール、ワイン、パン等に用いられるその他の醸造酵母S. cerevisiaeとを区別できなければ、より良い『清酒』醸造を行うことはできません。
清酒酵母S. sakeの研究を積極的に行い、清酒酵母S. sakeとS. cerevisiaeを実用や嗜好に左右されることなく、微生物学的に区別、分類することが、清酒醸造従事者にとって不可欠であり、意義があります。
研究室トピックス|醸造微生物学研究室 | 東京農業大学
酵母添加タイミングについて。
かつては蔵内に存在していた蔵付き酵母が自然に育てられたが、現在では醸造の安定化のために優良酵母を添加する場合も少なくない。
酵母を添加する場合は、亜硝酸によって増殖が阻害されないように、酒母中の亜硝酸反応が消えてから添加する。
生酛系酒母・生酛 | 灘の酒用語集
家つき酵母・蔵つき酵母 | 灘の酒用語集
http://www.nada-ken.com/main/jp/index_i/189.html
清酒酵母 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E9%85%92%E9%85%B5%E6%AF%8D
出芽酵母 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E8%8A%BD%E9%85%B5%E6%AF%8D
醤油
耐塩性のある酵母のみが生育する。
醤油づくりで活躍する酵母は大きく2つ。主発酵酵母と後熟酵母です。
まず主発酵酵母がブドウ糖を元にアルコールを生み出し、乳酸菌がつくり出した有機酸と化学反応をして複雑な香りをつくりだします。続いて、主発酵酵母の活動が落ち着き熟成期に入ると後熟酵母にバトンタッチ。
小麦の皮の成分から熟成香に分類される燻製のような香りを出し風味に深みを与えるなど、ゆっくりゆっくりと活動していきます。
この深みは一年以上醸造した醤油でないと出てこないといわれています。
酵母菌 | 職人醤油 - 醤油を使い分けると、食はもっと楽しくなる!
・Zygosaccharomyces rouxii
主発酵酵母。
発酵適温は28℃前後。
pHが5.4以下で活動。
しょう油もろみ,味噌の主発酵酵母で,pHが5.4以下で活動する。
しょう油もろみの酵母発酵は,この菌の適温である28℃前後に90日程度保持して,その菌数は最低105/g,通常106/9以上とし,3~4%のアルコールを生成させることが必要とされている。
ここで留意しなければならないのは,しょう油もろみの酵母発酵はアルコールそのものが最終の目的物ではない点で,アルコールは単に香気成分の一つの指標であり,この程度まで発酵すればその他のしょう油香気成分が副成してくる目安が得られる。
熟成に関する微生物について
・Candida versatilis, Candida etchellsii 等
後熟酵母。
古い分類ではTorulopsisに属していたので古い文献を見る時は注意。
Tomlopsis属酵母のある菌株はしょう油もろみの後熟酵母として,とくにしょう油香を特徴づける4エチルグアヤコールの生成能を有する点から注目されるようになった。
S. roumxiiよりもかなり細胞が小型で,好塩的性格を有し,醸造後期に除々にその影響を現わす。
熟成に関する微生物について
酵母の役割。
酵母の役割は原料臭,未熟臭(豆臭,米臭など),温醸臭などの消失や悪い臭いのマスク,味噌や醤油の芳香の付与(4-エチルグアヤコールが醤油の香と言われていたが醤油の香が強すぎるため,4-Hydroxy-2(or5)-ethyl-5(or2)-methyl-3(2H)-furanoneが醤油の塩味をやわらげ,まろやかな味にし,醤油のカラメルのような甘い香をもち,品質の良い醤油に含まれ,また酵母菌体の自己消化によりゴク味や,おし味を付与し,Z.rouxiiの増殖に伴なってコハク酸が生成され,旨味を増している.
味噌,醤油の微生物
熟成に関する微生物について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/66/7/66_7_675/_pdf
耐塩性酵母 Zygosaccharomyces rouxii の生理特性(1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/92/11/92_11_783/_pdf/-char/ja
酵母菌 | 職人醤油 - 醤油を使い分けると、食はもっと楽しくなる!
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0711
A. oryzae麹を使って醤油を仕込む場合
A. oryzae麹はA. sojae麹よりも、pH低下が緩やかなため適正添加時期(pH5.0~5.2のとき)が長い。
酢酸が少ないので阻害を受けずアルコール発酵が強いが、熟成の後半では一部が揮散し最終的に差はなくなる。
(A.sojae No.9麹の諸味について)アルコール発酵が弱いのは醤油酵母が諸味中の酢酸によって阻害を受けているためと思われた。
したがって,A.sojae No.9麹で諸味を仕込む場合には,諸味pHの推移を厳密に把握し,培養酵母の適正添加時期(pH5.0~5.2のとき)を逸しないようにする必要がある。
Aspergillus sojaeとAspergillus oryzaeを使用した醤油麹及び醤油の比較
A.oryzae S-03麹の諸味は熟成の早い時期にアルコールが生成したために熟成の後半で一部揮散し,逆にA.sojae No.9麹の諸味はアルコール生成が遅れていたものの,徐々にA.oryzae s-03麹による諸味のレベルに追いついたためと考えられた。
Aspergillus sojaeとAspergillus oryzaeを使用した醤油麹及び醤油の比較
参考文献
生酛
清酒醸造微生物学の進歩 (1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/1/79_1_33/_pdf
清酒醸造微生物学の進歩 (2)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/2/79_2_106/_pdf/-char/ja
清酒醸造微生物学の進歩 (3)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/3/79_3_180/_pdf/-char/ja
清酒醸造微生物学の進歩 (4)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/4/79_4_229/_pdf/-char/ja
清酒醸造微生物学の進歩 (5)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/5/79_5_335/_pdf/-char/ja
生酛系酒母・生酛 | 灘の酒用語集
http://www.nada-ken.com/main/jp/index_ki/224.html
醤油
醤油醸造微生物学の進歩 (1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/9/79_9_611/_pdf/-char/ja
醤油醸造微生物学の進歩 (2)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/79/11/79_11_802/_pdf/-char/ja
醤油醸造微生物学の進歩 (3)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/80/1/80_1_29/_pdf/-char/ja
Aspergillus sojaeとAspergillus oryzaeを使用した醤油麹及び醤油の比較
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/84/8/84_8_549/_pdf
醤油づくりの微生物(麹菌・乳酸菌・酵母菌) | 職人醤油 - 醤油を使い分けると、食はもっと楽しくなる!
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0707