瓶燗火入れについての実験と考察

寸胴鍋と低温調理器を買った。
四合瓶の瓶燗火入れが出来るようになった🍶🔥

生の夏酒を火入れして火入れ通年酒みたいな食中酒に変化させることができるのか?ってことを実験してみたので雑感。
ちなみに、自家アル添、自家加水、自家ブレンド、自家火入れ、ひいては自家熟成も蔵元の商品コンセプトを否定する消費者の劣悪なエゴでしかないと思っているのでラベルは隠しておく。

用意したもの


瓶燗火入れする対象

・奥の緑のボトル
純米無濾過生原酒。
精米歩合70%。

・右手前の青のボトル
純米生酒。
精米歩合60%。

・左手前の緑のボトル
温度確認用の水道水。

瓶燗火入れする設備

・寸胴鍋
24cm、約10L。

・低温調理器
Vsadeyというメーカーの商品。
爆発しても文句言えないくらい安い。
温度の誤差は、水だけ温めた場合には水温は設定温度よりも1度程度高くなる模様。
ものを入れたらちょうど設定したくらいの水温になるのかなという感じ。

自家瓶燗火入れ

期待する変化と仮説

生酒感、フレッシュ感、香りをなくし、落ち着きのある火入れ通年酒みたいな食中酒に変化させたい。

一般に火入れの技術としては、いかにフレッシュ感を保持したまま殺菌するかが焦点になっているように思う。
しかし今回求めているのは是とされている火入れ技術の反対。
つまり、下手くそな火入れをすれば期待する酒になる…?

フレッシュ感を損なわせることが目的ならば瓶燗火入れではなく蛇管スタイルの火入れ方法の方が良い気がするけど、少量の場合瓶燗火入れの方が楽なのでとりあえず瓶燗火入れでやってみる。

火入れ方法

瓶が割れたら嫌なので、2段階で温めることにした。
50度で保温、冷蔵庫から出したての瓶投入、63度で設定し直し、瓶内の温度が62度を超えてたあたりから20分くらい加熱し続ける。
加熱が終わったらお湯を捨て水道水を張り直す、水がぬるくなったら再度水道水を張り直す。
ある程度冷えたら冷蔵庫へ。

この方法で最高温度63度、水道水で冷やして27度くらい、そこから冷蔵庫へ。

小規模且つ北国ではない地域の課題。
・寸胴鍋の体積が小さいので冷えた瓶を投入すると水温が下がる。
・5月東京の水道水はぬるいので急冷は難しい。

実際の変化

生酒と自家火入れのお酒を比較すると、鼻に抜ける香りの広がりが弱まったように思う。
それ故の落ち着きはあるものの、一般に思う生/火入れの差というよりは、開栓直後/開栓数日後の差のような違いに感じる。
しかし若さというか喉に直接来る感じの青さ(?)は変わらず、期待するような食中酒にはならなかった。

無理やり差を見出そうとするとそんな感じだが、実際のところはそんなにいうほど違いはない。
やはり瓶燗火入れというのは劣化の少ない火入れ方法なのだろうと思う。
生の味わいを残したまま殺菌するのであれば瓶燗火入れは有用だが、火入れらしい味わいを求めるのであれば瓶燗火入れは適さないのだろう。

今回の自家火入れは少量ということもあり、思いの外質の高い火入れとなってしまったのかもしれない。
もっと味わいを変化させるような瓶燗火入れをするなら、
・水から温める。
・長めに火入れする。
・自然に冷えるのを待つ。
くらいでもよかったかもしれない。

蔵での瓶燗火入れ

今まで見てきた3つの蔵の瓶燗火入れの様子。
一応蔵の名前は伏せておく。
写真の撮影時間は、加熱し始めから冷却し始めまでという訳ではないので参考程度に。

蔵A

水に瓶を浸けてお湯をかけ流して徐々に加熱。
水のシャワーをかけて冷却。

写真のEXIF情報が飛んでしまっていたので撮影時間は不明。


蔵B

瓶をお湯に浸けて、お湯の中でP箱を動かしながら急速加熱。
水に瓶を浸けて、その上から雪をかけて急速冷却。

ここの蔵は瓶燗火入れ作業で温度差により瓶を結構割っていた印象がある。
当時は「あーやっちゃったな、もったいないな」くらいにしか思ってなかったけど、今思うと劣化を抑えるべくかなりキワキワな温度差を攻めた火入れをしていたんだなと思う。

1枚目:11時7分。
2枚目:11時12分。


蔵C

水に瓶を浸けて、お風呂の追い焚きの要領で水を循環させて徐々に加熱。(だったような気がする)
水のシャワーをかけて冷却。

1枚目:12時9分。
2枚目:13時12分。


あとがき

自家瓶燗火入れは、多少の劣化はあるものの個人的にはいうほどではないと感じる。
生酒を長期熟成させたいもしくは常温保存したいというような特殊な場合には有効なのでは。

消費者としては、落ち着きのある食中酒が飲みたいなら火入れ通年酒を最初から買った方が良い。
適宜熟成もされてるだろうし。